プロフィール

山本のりこ
Noriko Yamamoto | Bossa Nova | vocalist, guitarist, songwriter
 
【お知らせ】
2022年をもってライブスケジュールのブログ掲載を終了いたしました。今後は終了後のレポートのみを投稿してまいります。ライブの開催予定は公式Web、またはTwitterにてどうぞご確認ください

2023-02-28

クラウジアの思い出

昨年、年の瀬になる前にいっそう冷え込んだ一週間がありました。その12月18日のこと、プラッサオンゼの店主クラウジアがご逝去されたとの突然の報せ。ご葬儀は12月24日に行われました。

年を越して冬の間、しばらく呆然と過ごしていましたが、やはり自分の区切りのためにも何か書き留めておきたいと思います。

私がプラッサオンゼに出演していた期間はたぶん2003年から9年間ほどです。その頃のお店はフル編成のバンドにシンガーがいる形のセッションライブを多くやっていて、選曲としてはMPB寄りのボサノヴァやサンバが流行っていた気がします。

ベーシストのコモブチさんが自分のセッションセットに私を誘ってくれて初めて出演をしました。ほかの面子は石川智さん、ヤマカミヒトミさん。吟味するように奥の方で見ていたクラウジアに終わってから声をかけられました。「歌はイイ。でもあんた洋服をなんとかしな。もっとカジュアルな服装がいいわよ」(私は当時ステージ衣装について全く勘違いをしていて、この日は全然似合わないベルベットのロングスカートを履いていた)

「はい、そうします。ママさんは服のセンスがいいですもんね、見習いマス!」と私は返事をしました。するとクラウジアは「アタシのことはいいのよ、、」と急に照れて、厨房に引っ込んでいきました。このとき初めて見た、歯に物着せない、でもちょっとシャイなクラウジアの印象は、以来お店とお付き合いさせていただく月日のなかでずっと変わりませんでした。

それは「正直」や「率直」というのとはすこし違っていて、うまく言えないのだけど、10代や20代の娘さんが持っているような「純粋さ」や「清潔さ」だったしょうか。お母さんと慕われてプラッサオンゼの手綱を締めながらも、店主の役目、母の役目という型にはまるのではなく、一人の女性らしい自然体の感性を大事にしておられました。そして何より、昭和の時代の美しい道徳観を持ってさまざまな物事に当たっておられたのが心に残っています。

クラウジアとの会話のなかで心に残っている言葉は数え切れないほどありますが、意外で面白かったのは「あたし、寝るのが一番好き」と仰っていたことです。その場に居たみんなが笑い転げましたが、今となっては一番思い出されます。お店をやっていた時は思う存分寝られなかったでしょうね。天国で、やっとゆっくり休めていますか?

沢山の素敵な時間を、本当にありがとうございました。心からご冥福をお祈りいたします。

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冒頭の写真について
お店では裏方に徹して写真にあまり写りたがらなかったクラウジア。手元に一枚も写真がないと寂しく思っていましたが、レオ・ミナックス来日のときにこっそり横から写したものが出てきました。

 

 

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